パソコンと古文書解読

第33話 辞書を“作る”

古文書の読めない文字を睨んだり、その意味が解らず頭を抱えるとき、一番活躍するのは電子辞書です。パソコンに組込んである「DDWin」で「広辞苑」などを使います。

「辞書は本に限る」とノタマウ人がいます。「たかが一つの言葉を調べるのに、パソコンのスイッチを入れて暫く待つ……、そんな面倒なことができるか」と……。この人はパソコンをあまり使わない人かも知れません。また、辞書を使わない人だと思います。重い辞書を机上に運び、眼鏡を掛けて細かい文字を探し、やっと見つけてメモする……、一つの言葉ではなく、多くの言葉を調べることは、大変な苦労です。(苦労した者でないと、その有難みがわかりません。断水の経験がないと水道の有難みが解らないのと同じです)。年寄にとっては「電子辞書サマサマ」です。

古文書を読むときは、いつもテキストファイルに書込みます。古文書中に「恭昭院」と書いてあるとします。正確に言うと、「恭昭院」と私が読んだだけで、それは誤読かも知れません。人名は必ず確認をしなくてはいけません。

一番楽な確認の方法は、電子辞書(DDWin)での検索です。「恭昭院」の文字をコピーして「DDWin」の検索窓に貼付けるだけです。私のDDWinには「広辞苑」「漢字源」「岩波日本史辞典」「平凡社世界大百科事典」などが組込んであり、「串刺し検索」(全ての辞書を一度に検索)ができます。見出し語にない場合は「広辞苑」の「全文検索」(解説文からも検索)もできます。残念ながら「恭昭院」は見つかりません。(第12話参照)

辞書がダメなら、「My Database」で「Grep検索」をします。「My Database」とは、「県史」や「市町村史」をテキストファイルとしてパソコンに保存したもので、重宝しています。「Grep検索窓」に「恭昭院」と貼付けして「Global検索」をかけると、「合計131個所見つけました」とその個所を示します。その内適当なものを選んでクリックすると、『広島県史』の一節が出てきます。(第11話参照)

【重晟】(シゲアキラ)宝暦13年(1763)〜寛政十一年(1799)
善次郎 上総介 安芸守 従四位下 侍従 左少将 備後守
寛保三年十月十七日生まる。宝暦八年十一月二十八日従四位下上総介。同十三年二月二十一日襲封。同三月朔日安芸守。明和元年閏十二月十八日侍従。寛政二年十一月二十七日少将。同十一年八月二十一日致仕。同九月四日備後守。文化十年閏十一月十三日卒、七一歳、恭昭院鸞台種徳。国泰寺にて葬儀を行ない霊柩は新庄山におさめる。室は尾張中納言宗勝女

「合計131個所」も見つかると、どれが適当なものか選ふのに苦労しますが、頼りになる方法です。

これでもダメなら最後の頼み、「Internet」で「Google検索」をします。Wikipediaで「浅野重晟」などが見つかりました。

以上、3つの方法を書きましたが、一番楽なのは電子辞書(DDWin)です。「恭昭院」が辞書に載せてないのなら、載せてある“自分用の辞書”を作れば解決です。「EBStudio(http://www31.ocn.ne.jp/~h_ishida/EBStudio.html)を使います。

テキストファイルで次のような項目を作ります。見出し語【読み】記事。

槍ヶ岳【やりがたけ】岐阜・長野両県境,飛騨山脈中央南寄りにある山。

全項目の原稿ができると、各項目に次のような記号を付け加えます。

<dt> 槍ヶ岳【やりがたけ】 </dt>
<dd>
岐阜・長野両県境,飛騨山脈中央南寄りにある山。 </dd>

あとの操作は、ソフトの「ヘルプ」に詳述してあります。原稿さえできれば簡単です。

「My Database」と並んで、「My Dictionary」は作る価値が充分あります。

 

 
 
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