パソコンと古文書解読

第7話 漢字の宝庫『今昔文字鏡』

 

漢和辞典で文字を探すとき、読みが分っていれば音訓索引を使います。読めないときは部首索引と画数から目的の文字にたどり着きます。それでも見つからないときは、最後の手段、総画索引です。いずれにしろ、簡単には「発見」できません。

パソコンで文字を探すとき、漢和辞典の音訓索引に相当する「かな」→「漢字」変換が普通で、いちばん楽です。
部首検索は「Atokツールバー」→「文字パレット」→「漢字検索」画面で「部首」・「画数」などを入れると候補文字が出ます。
総画索引に似たものとして「文字パレット」の中に「和文コード表」「Unicode表」があります。
ほかに、「Atokツールバー」には「手書文字入力」があり、マウスで画面に手書すると候補文字が出て来るという、パソコンらしい検索方法です。

今昔文字鏡」は16万字を持っています。その大部分は今まで見たこともない文字ですから、勿論読みも分らないのが当然です。このような文字群を相手に検索するソフト「今昔文字鏡」(製品版)はユニークな、強力な、検索方法を使っています。
いつでも使えるように、「今昔文字鏡」のショートカットを「クイック起動」に置きます。

それは、表示したい漢字を自分で適当に分解して「部品」に分け、その「部品」を含む多くの漢字を検索し、その中から目的の漢字を選択します。たとえば、を検索します。この字は「禾」と「火」からできています。この2つを「文字部品」として検索すると、「」と「」を含む175文字(「」……など)が出てきます(「今昔文字鏡」ver.2.3による。以下同じ)。その中に「」があります。

製品版「今昔文字鏡」には、本来の使い方の外に、「裏技」的使用法があります。
古文書を解読するとき、文字の一部分は読めるのに、分らない文字があります。「」と「」があるなら、これを部品として検索すると、84字が出ました。絞り込んだ候補文字から見当をつけて、『くずし字用例辞典』等で確認します。

諸橋『大漢和辞典』の索引としても利用できます。『大漢和辞典』は大部なものだけに、収録熟語数は他の追随を許しませんが、最初に「索引」巻で何巻何ページにあるかを探す必要があります。これだけでも大変です。「今昔文字鏡」では「海」を見つけだし、その「文字情報」画面から、『大漢和』6巻1138ページにあると知れます。

もう一つの利用法は、異体字(漢字や仮名の標準字体以外のもの)の検索です。普通の漢和辞典には、まず異体字は載せてないので、『難字解読字典』(柏書房)を使っていました。例えば、「難」の異体字「」。「文字鏡」で「部品」を揃えて検索すると出てきます。「情報」→「文字情報」画面で「」は「難」の異体字だと分かります。

また、漢字1文字の「かな漢字変換」としても強力な道具です。例えば、Atokで、「おそれる」を漢字に変換すると、「恐」「懼」「畏」「怖」の4文字が候補として表示されます。「漢字源」には20文字あります。「今昔文字鏡」では「おそれる」と入力して「検索」すうると、いきなり35の漢字が出ます。「読み」さえわかっていれば、「恟」「惧」などの、あまり使わない漢字を簡単に出すことができます。

  

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