パソコンと古文書解読

第18話 なぜ読めないのか

 

古文書を趣味として勉強しだしてだいぶ経ちましたが、いまだによく誤読をします。なぜ誤読をするのか、その理由を考えてみました。

字を知らないから……」と言われれば、その通です。字のくずし方も知りません。年配の方がスラスラと書かれるのを見て、羨やましくなりますが、もう無理です。なにしろ、「ごまんと」ある漢字ですから……。今では「知らなくて当然」とひらきなおっています。知らない字に出くわしたら、『くずし字用例辞典(児玉幸多編 東京堂出版)や『大漢和辞典(諸橋轍次著 大修館書店)で見当を付けることができます。
また、近世古文書(特に地方文書)に使われる漢字はそれほど多くはないように思います。1,2年も勉強すれば、使用頻度の高い漢字の9割は覚えることができるのではないでしょうか。多くの「字を知らなくても」何とか読めるものです。漢和辞典の字を全部知らなくても新聞が不自由なく読めるのと同じです。

今と違った言回しを知らないから……」という理由も、3,4年の勉強でほぼ解消します。古文書を習いだした頃は「……御座候」という言回しでも「面白狩(おもしろがる)」こともありましたが、今は違和感はありません。

それでも誤読が絶えないのは、当時の人が常識として知っていた言葉や社会の仕組を、私が知らないからだと思います。こればかりは、「慣れ」で解決することではないからです。

「当時の常識」なら、漢字の数と比較にならないほど“多くの常識”があるはずです。地方文書に限ってみても、色々な生活の場面があります。そこには勉強しきれないほどの“常識”があります。そのように考えると、何年勉強しようと「誤読をするのは当然……」という、恐ろしい結論になります。

古文書解読にパソコンを使うのは、単に能率的だからだけではありません。“常識”のなさを、辞書類・「個人データベース」やインターネットでカバーするためです。ここにパソコンの必要性があると考え、このWebページを作りました。

古文書が簡単には読めない理由の一つとして、書いた側に問題のある場合も当然あります。「古文書」を書き残した人も人間ですから、おならもするし、下手な字を書くこともあるでしょう。大先生でさえ、誤字・あて字がみられます。そのうえ虫食いまである古文書です。1字1字の文字にこだわっていたら、かえって正確に読みとることができません。

「この字をどう読んだらいいんでしょうか」と、気楽に聞ける人が身近にいるとは限りません。近くにサークルがあり、仲間に入れてもらえれば好都合ですが……。

 

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