パソコンと古文書解読

第14話 簡易製本

古文書の勉強を続けていると、コピーされた古文書資料が貯まります。これを茶封筒に入れ、段ボール箱にしまい、押入にでも納めると、“死蔵資料”になってしまいます。これらは、製本して、背表紙にタイトルを書き、本棚に並べないと、“迷子”になります。

一番作業が簡単な綴じ方は、ホチキスによる袋綴じ(文字を記した面を外側にして紙を1枚ずつ中央から2つに折り、幾枚かを重ね、折り目でない方をホチキスで綴じる)ですが、本を開いて机上に置くと、勝手に閉じてしまします。本の開きが悪く、使い勝手の最も悪い綴じ方です。ホチキスで綴じてある本紙に表紙をつけるなら、表と裏に、ホチキスの針を隠すように見返しを貼り、見返しと表紙をつなぎます。

本屋に並んでいるペーパーバックの本は、背の部分を糊(ホットメルト)で固める無線綴じ(糸や針金を用いず、接着剤のみで折丁の背を接合するもの)です。本の開きに不満が残りますが、見栄えが良く、作業もわりと簡単なので、“売り物”として製本するのなら、このやり方が適当です。
市販の「簡易製本機」も、ほとんどはこの無線綴じ用です。この道具を使えば楽ですが、結構いい値段が付いていますので、“自作”します。(市販の「簡易製本機」では2cm厚の本が限界ですが、このやり方なら6cm厚でもできます。)

  1. ホットメルトのシートを作ります
    糊はホットメルト(EVA系ホットメルト型可塑性接着剤)。これは熱を加えるとドロドロに溶け(手にくっつくと火傷をします)、冷えると固まります。手芸などに使う「ホットボンド」(グルーガン)用の「ホットスティック」がホットメルトです。(100円ショップでも売っています。「グルーガン」は要りません)。
    古雑誌の上にクッキングシートを敷き、ホットスティック3本を並べ、その上にまたクッキングシートをかぶせて、その上からアイロンを当ててホットメルトを溶かし、均一の厚さ(1o弱)になるように圧力を加えて拡げます。冷えてからクッキングシートをはがします。ホットメルトシートが厚すぎると、紙間に入り込みます。薄いと紙がはがれます。
    既製品の「リヒト ホットメルトシート(品番M-1083)」を使えば、この作業は不要で、便利です。
    シートを、幅は本厚、天地は本より4o短く、カッターで正確に切ります。

  2. 本の背を固めます。
    a  印刷面を外側にして2つ折りにします(袋綴じ)。しっかりとした折目を付けるには、ガラスのコップの底でしごくか、壁紙用の押さえローラーを使います。
    b  茶封筒用紙を、本厚+40o幅、本の天地より2p長く切り、「背固め用紙」とします。
    c  その真ん中に、動かないようにホットメルトシートを貼り付け、「コの字」形に折りまげ、本の背にかぶせます。
    d  2枚の押え板(MDF合板。縦横とも本紙より5oほど小さくする)で本を挟み、本紙の・天地をしっかり揃えて、ゴムバンド(または大型目玉クリップ)をかけてとめます。(下図)
    e   アイロンの底面を上向きに固定し(下図自作スタンド)、アイロン面に、押え板で挟んだままの本の背を当てて押しつけ、上と表裏から力を加えながら動かして加熱します(右図参照)。ホットメルトが溶けると、端に溶け出してくるので、加熱は終り、そのまま冷却します。冷えたら、板からはずし、余分の背固め用紙を切り取ります。(はみ出したホットメルトでアイロンが汚れたら、熱いうちにティッシュペーパーで拭き取ります。)
    f   本紙の最初と最後の紙に、見返し用紙を折目側を本の背に糊付け(液状糊)します。
    g  表紙を付けないで、本の背(背固め用紙)に直接タイトルを書き入れて、本棚に並べても構いません。

  3. 本紙と表紙を合体します。
    a  本より少し大きめの表紙用紙(レザック紙、薄い本なら厚手のカラーケント紙)を準備し、本厚に合わせて「コ」の字形に折り曲げ、背固めの済んだ本紙をくるみます。
    b  表裏の背固め用紙の外側、本の背から2p幅だけ液体糊(または両面テープ)を付け、表紙とつなぎます。(全面の糊付はしません。本の背には糊り付はしません。)
    c  本厚3p以下なら、上記、背固め用紙の代りに表紙(レザック紙)に直接糊付けしても構いません。(アイロンで表紙が汚れるようなら、間にクッキングペーパーを挟みます。)

  4. 表紙の耳を切ります
    最後に、表紙を本紙に合わせて切り揃えます。定規をページの間に差し込み、カッターナイフで切り落します。定規は金属製の薄いものが便利です。

  5. 注意点
    古文書テキストは、たいてい片面に2ページ分をコピーしているので、二つ折りにして「袋綴じ製本」になります。正確に二つ折りにしないと、短いページには糊が付きません。長短があるようなら、本紙の背に金切り鋸で沢山の溝を入れて、短いページにも糊が届くようにしておきます。

    用具・材料:ホットメルトシート(リヒト製)、茶封筒、押え板(5o厚MDF合板、本の大きさ)2枚、ゴムバンド(自転車用荷紐)、レザック紙、液体糊
    アイロンスタンド(右図自作)

このやり方は、「アイロン製本機」http://www.wind.co.jp/takabaru/catalog/report/subarasi/tachi12.htmlを参考にしました。

針金綴じやホットメルト・ボンドを使う製本は、丈夫ですが、本の開きが悪いので私は嫌いです。特別な道具も材料も使わないで簡単に製本でき、本を開くと180度左右に開く、お勧めの製本の仕方があります。書翰など切れ目のないコピーの製本には特に便利です。水平開き製本とでもいいましょうか。上記のホットメルトの代りに液体糊(アイロン不用)、背固めをするなら、しなやかな和紙(画仙紙。または不織布)を使う製本です。

糸綴じなど、手の込んだ製本法は「ブッキスト」のWebページ(http://www1.ocn.ne.jp/~bookist/bookist1.html)が詳細に説明しています。

製本とならんで、よく持ち運びをする本にはが必要です。厚紙と木工用ボンドで簡単にできます。本の傷みが違います。

以上、製本を中心にしてお話をしました。どの方法をとるにしろ、面倒な仕事です。“趣味”だと思わないとやっておれません。また、製本材料はその都度用意するのでなく、あらかじめまとめて準備しておきます。レザック紙を必要以上に買ってきて、サイズに合わせて天地は切っておきます。見返し用紙は何枚も2つ折りをしておきます……。

 

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