パソコンと古文書解読

第4話 タイピングの環境を整える

 

エディタを起動すると、文字の入力画面が現れます。そこで仕事に取りかかります。
「パソコンで仕事をする」時間の大部分は、キーボードを叩いて文字を入力している時間です。
だから、文字の入力をいかに能率的にするかが、快適なパソコン操作の鍵になります

まず、タイピングが問題になります。1本指で、キーを探しながらタイピングするのでは、「快適」とはほど遠い状態です。10本の指を総動員して、各指の守備範囲を守り、「ローマ字入力」すれば、程々の早さで入力出来るようになります。

気持よくタイピングするには、キーボードは特に大切な機器だと思います。
以前は、親指シフトのワープロ専用機を長く使っていましたが、パソコンに切り替えるとき困りました。親指シフトのキーボード(REUDOの「RboadPro」)の動きが悪くなったのを期に、ローマ字入力に変更し、ペコペコしたキータッチのMicrosoft「NaturalKeyboard Pro」からFILCOのメカニカルキーボード「翼」に変え、「Happy Hacking Lite2」を経て、現在の「Realforce101」(英語配列)に至っています。長いスペースバーは「変換」に好都合で、指への負担の軽いキーボードです。もっとも、これは個人の好き嫌いの問題で、とやかく言うつもりはありませんが……。

タイピングの基本姿勢は、「ヒジは90度くらい曲げて、腕は水平に、手はキーボードや机に触れないように……」といわれています。何時間も作業をすると、肩や腕、手などが痛くなります。腕を宙に浮かすのが一番疲れますので、アームレストが必要になります。市販されているもので適当なものがないので自作します。桐の板で作ります。要らなくなった桐の箱を分解して、ボンドで接着して厚さ2cm、幅6cm、長さ40cm位の合板を作ります。表面だけ桐を使ってもかまいません。鉋で角を取り、傾斜を付け、両面テープで机に固定します。柔かで具合がいいです。

大型の本でも載せられる書見台があると原稿(本)が見やすくなります。市販の金属製の書見台の上に、自作の台(断面L字)をのせるだけです。L字の底辺で本の重量を支えますが、その幅は7pほどあれば、厚い本を乗せて、上にカーソルも置けます。今読んでいる行を示すカーソルは、アクリル製の逆T字の定規を作り、本の上を左右にスライドさせます。(30p定規を2p幅に切り、両面テープで接着して逆T字にします。底辺の長さは30p。底辺が長いのは、本が閉じないように押える役目もあります。)

年寄には拡大鏡も必需品です。直径8cmのガラスレンズを使っていますが、ピント合せが面倒なので、透明なアクリル板を曲げて角柱(3面だけにする)を作り、セロテープでレンズを取付けました。1面が欠けているので、古文書の文字をトレーシングペーパに写すとき、拡大鏡の下で鉛筆でなぞることもできます。(アクリル板の曲げ方:金属パイプをガスレンジで加熱し、アクリル板を当てて、柔らかくなったら折曲げます。)

次の問題が、漢字に変換することです。「おぼえ」と打ち込み、Spaceキーを叩いて「覚」と変換します。簡単なことに思えますが、古文書では思い通りの文字を出すという最も基本的なことさえ簡単ではありません。

この漢字変換の仕事を担当するソフトが「日本語入力システム(IME)です。Windowsには「MS-IME」というソフトが付属していますし、ワープロソフト「一太郎」には「Atok」が付いています。私が使っているのはAtok2012なので、それに基づいて説明しますが、MS-IMEでもほぼ同様な操作で出来ます。IMEの「環境設定」をするだけでも、入力はだいぶ楽になります。

古文書では送り仮名の省略が一般的です。「切紙」と表示したいとき、「きりがみ」と打込み、変換します。すると「切紙」になってしまいます。そこで、普通は、カーソルを動かして、「り」を削除し、再びカーソル位置を元に戻します。もっと簡単な方法は、Atokツールバーで、送り仮名を「省く」に設定することです。すると「きりがみ」→「切紙」と変換できます。

次は、「鰥寡孤独」(かんかこどく)です。
「鰥寡」は変換しても出てきません。「鰥」の1字も出ません。鰥の字は基本辞書(Atok16.dic)にはありません。「単漢字辞書(Atok16tk.dic)にはありますので、是非「辞書セット」に組み込んでください。組み込んで「かん」と打てば163の候補があり、その中に「鰥」を見つけることが出来ます。ただし、単漢字辞書なので「鰥」(漢字一字)は出ますが、「鰥寡」は出ません。

「辞書セット」に組み込むには、Atokツールバー→「プロパティ」→「辞書・学習」画面で「追加」をクリックして「単漢字辞書」にチェックを入れるだけです。「人名辞書」も組込むと良いと思います。

余談ですが、住所録作成時には、「郵便番号辞書(Atok16y7.dic)を組み込むと、住所の入力に便利です。「730」→変換→「広島県広島市中区」「730−0037」→変換→「広島県広島市中区中町」となります。人に住所を尋ねるときは、住所と郵便番号はセットにして記録すれば、住所の入力には好都合です。

自在」と入力したいときは、「かんじざい」と打込み、変換します。「観自在」は変換辞書にはないはずで、簡単には出てこないでしょう。
そこでまず「」を出そうとして、「かん」→変換しますが163の「変換候補」が出ました。これから探すのは大変ですから、「観」を含む熟語を思い出し、例えば「察」を出します。これなら「変換候補」は4つでした。「察」は要りませんので「BackSpace」キーで消します。
「客」を出すと、「客」を消して元に戻るには、@「←」、A「BackSpace」、B「→」のキー操作になります。カーソルの左の字は「BackSpace」で消せるのに、そのもう1つ左を消すには、このように面倒な操作になります。
私は、「Ctrl」+「b」の簡単な操作でできるようにしてあります。(「キーボードマクロ」は後述)。
「観」に続いて「自在」を打込み、「観自在」を単語登録しておきます。

私のお勧めのフリーソフトがあります。
@ 「KeySwap」 はキーの入替えをしてくれます。「Caps Lock」は使いませんので、「Tab」にします。右「Ctrl」は「Delete」に、右「Shift」は「Back Space」に入替えます。
A 「CLISM」 はクリップボード履歴ソフトです。直前のコピーした文字だけではなく、それ以前のものも覚えていて、簡単に取出せます。「小さいメモ帳」として重宝しています。
B 「CLaunch」も使い勝手のよいランチャーです。

 

inserted by FC2 system